ASTとCRDT — 文字列編集から構造編集へ

ソフトウェアの世界では、ここ10年くらいでかなり大きな変化が起きている。

昔は、document.txt を編集するという発想だった。今は、構造化されたデータを操作するという発想に変わってきている。

この変化の中心にあるのが、AST(Abstract Syntax Tree)とCRDT(Conflict-free Replicated Data Type)である。

これらは単なる実装テクニックではなく、「人間が複雑な情報をどう扱うか」の根本を変え始めている。

第1章 ASTとは何か

ASTは、Abstract Syntax Tree の略で、日本語では「抽象構文木」と呼ばれる。

名前は難しいが、本質は単純である。

ASTとは

ASTとは、コードを意味の構造として表現したもの。

例えば、次のようなコードがある。


1 + 2 * 3

人間はこれを次のように理解する。

1 + (2 * 3)

コンピュータも同じで、内部では次のような木構造に変換する。

+

/ \

1   *

/ \